EV電池の寿命到来で脚光、フィルタープレスが担うリサイクルの要

EV電池の寿命到来で脚光、フィルタープレスが担うリサイクルの要のイメージ

ニュースの概要

市場調査会社IndexBoxは、バッテリーリサイクル向けフィルタープレスの世界市場が2035年にかけて拡大するとの見通しを示した。背景にあるのは、初期に普及した電気自動車の電池が寿命を迎え始めていることだ。使用済み電池は粉砕後に酸で溶かされ、リチウム、ニッケル、コバルトなどを取り出す。その過程では、固形の残りかすと金属を含む液体を分ける作業が欠かせない。この固液分離を担う装置がフィルタープレスである。派手な技術ではないが、回収率や廃液の扱いを左右するため、リサイクル工場の設備投資で重みを増している。

引用元: バッテリーリサイクル用フィルタープレス市場、2035年まで拡大へ:EV電池の寿命到来が成長を牽引 - ニュースと統計(IndexBox)

分析・見解

電池の波が来る前に装置の需要が先行する理由

電気自動車の電池は、おおむね8年から15年で車載用としての役目を終える。2010年代半ばに売れた車が、まさに入れ替え時期へ入りつつある。今後は年ごとに回収量が増えていく。

ここで見落とされやすいのは、リサイクル工場の設備は電池が届く前に買われるという点だ。処理量が増えてから装置を探しても、納期が間に合わない。フィルタープレスは大型で、据え付けにも時間がかかる。だから需要は電池の発生より少し早く立ち上がる。

湿式精錬で固液分離が回収率を決める

使用済み電池を砕くと、ブラックマスと呼ばれる黒い粉が得られる。正極材と負極材が混ざったものだ。これを酸で溶かすと、有用な金属が溶けた液と、溶け残った固体ができる。

フィルタープレスは、布を張った板の間にこの混合物を送り込み、圧力で水分を絞り出す。固体は板の間に残り、金属を含む液だけが次の工程へ進む。ここで固体に液が残ると、その分の金属を取りこぼす。逆に液に微粒子が混じると、後段の精製で詰まりや品質低下を招く。

つまり、地味な装置が歩留まり(=原料から製品として取れる割合)を左右する。リチウムやコバルトの価格が高い局面ほど、数ポイントの差が利益に直結する。

他の分離方式との比べ方

固液分離には、遠心分離機や真空ろ過機といった別の方法もある。遠心分離は連続運転に向く一方、微細な粒子が多い液では分離が甘くなりやすい。真空ろ過は構造が単純だが、圧力が低いため含水率が下がりにくい。

フィルタープレスは回分式(=一定量ずつ処理する方式)で手間はかかるが、固体をよく乾かせる。電池のように不純物管理が厳しい用途では、この仕上がりの良さが評価される。鉱山や下水処理で長年使われてきた実績も、導入側の安心材料になる。

市場拡大の裏にある三つの不確実性

成長予測には条件がある。第一に、電池の化学組成の変化だ。リン酸鉄系の電池が増えると、ニッケルやコバルトの回収価値が下がり、湿式精錬の採算は変わる。第二に、各国の規制である。欧州の電池規則は再生材の使用割合を段階的に求めており、これが回収側の投資を後押しする。第三に、装置の自動化だ。板の開閉や布の洗浄を自動で行えるかで、人手不足の現場での使いやすさが変わる。

つまり、市場が伸びること自体は確かでも、どの仕様の装置が選ばれるかは読み切れない。数字だけを追うと判断を誤りやすい。

ビジネスへの影響

回収事業者は装置の仕様を先に固める

リサイクル事業への参入や増強を考えるなら、処理する電池の種類を先に決めたい。三元系(ニッケル・マンガン・コバルト)を中心にするのか、リン酸鉄系を含めるのかで、使う薬品も廃液の性質も変わる。酸に強い素材の板や布が要るかどうかも、ここで決まる。

装置の見積もりを取る際は、本体価格だけでなく、ろ布の交換頻度と廃棄コストも比べてほしい。消耗品の費用は、数年で本体価格に迫ることがある。

素材メーカーと部品メーカーの商機

装置を売る側にとっては、保守とろ布の供給が安定した収益源になる。リサイクル工場は止められない設備を抱えるため、交換部品の納期を重視する。国内で在庫を持てる企業は強みを出しやすい。

電池メーカーや自動車メーカーにとっては、自社の電池から取り出した金属を再び使う循環の設計が課題になる。委託先の工程能力を確かめるうえで、固液分離の仕様は有効なチェック項目になる。

投資判断で押さえたい三つの確認点

一つ目は、原料の確保である。装置を入れても電池が集まらなければ稼働率は上がらない。二つ目は、廃液と固形残渣の処理先だ。ここが詰まると工場全体が止まる。三つ目は、金属価格が下がった局面でも続けられるかの試算である。価格が高い時の収支だけで判断すると、下落時に苦しくなる。

少なくとも、価格が現在の7割になった場合の採算を一度計算しておくと、無理のない投資規模が見えてくる。

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